【211】助動詞⑪(断定の)「なり」,(断定の)「たり」 |
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 接続 | 意味 |
なら |
なり |
なり |
なる |
なれ |
なれ |
※ |
〔断定〕〔存在〕 |
に |
訳し方の基本:『~である』〔断定〕,『~にある』〔存在〕 |
「場所を表す語A」なる「名詞B」→『AにあるB,AにいるB』 |
「場所を表す語A」なりける「名詞B」→『AにあったB,AにいたB』 |
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 接続 | 意味 |
たら |
たり |
たり |
たる |
たれ |
たれ |
※ |
〔断定〕 |
と |
さて・・・・「なり」はここからが厄介でございまして・・・・ |
助動詞「なり」には〔断定・存在〕の「なり」と,〔伝聞・推定〕「なり」があり,この識別についてが厄介となります。実際のところ文脈判断する部分もあるのだけど,ここでは“これだけは絶対覚えよう”というのを示しておきます。 |
・・・・とここまではいいのだけど・・・・実は〔伝聞・推定〕の「なり」ってラ変動詞には「連体形」につくのですよね。・・・・ということで「ラ変動詞の連体形」+「なり」なんてでてきたら困ってしまう。じゃあ文脈判断するのかっていえば
そもそも片方は〔断定〕で片方は〔推定〕なわけで,『ハッキリこうだ』というか『ドウヤラこうらしい』というかの違いだからどっちともとれることは多々あるわけです。そのくせ入試問題はイジワルなのでそういうところをついてくる。 |
④「あ(ん)なり」「か(ん)なり」「た(ん)なり」「な(ん)なり」「ざza(ん)なり」ときたときの「なり」は〔伝聞・推定〕で決まり! |
これはどういうことかというと,例えばラ変動詞の「あり」の連体形の「ある」に「なり」をつけて「あるなり」が本来の言い方なのだけどこの「なり」が〔伝聞・推定〕だったときまず「あるなり」とはならず「あんなり」→「あなり」と変わってしまうことが多いということなんです。もちろんそうでない場合もあるのだけど,そんな微妙な場合を入試問題に出すわけがない。(というかいまだにナントカ物語のドコソコの「なり」は〔断定〕かや?〔推定〕かや?なんてヒマな議論している学者は多いわけでして)・・・・と信じましょう。信じるものは救われる! |
さて・・・・〔断定(系)〕の「なり」と〔推定(系)〕の「なり」の区別は以上でとりあえずいいとして・・・・「なり」にはまだまだ厄介なものがあります。 |
「名詞」+「なり」の場合〔断定〕なのだけど・・・・日本語ってのは非常に摩訶不思議な言語で,「名詞」を加工して「形容動詞」ってやつをつくるんですよね。その加工のしかたがこれまた「名詞」+「なり」(あるいは「名詞」+「たり」)となるわけです。 |
つまり結論からいえば一見「名詞」+「なり」でも実はすべてまるごと「形容動詞」だったりするものもあるわけで・・・・ |
よく古典の授業で教師は“~ゲなり”“~カなり”ときたら「形容動詞」と教えていてあれはあれで間違いじゃないけど |
それ以外にも英語でいう「抽象名詞」+「なり」となる場合でも「形容動詞」となる場合もあるのでご用心 |
こういう例は軽く100種くらいあるけど次のものは覚えておいていいかもしれません。(絶対必須というわけではないけど) |
「不審なり」「不断なり」「無用なり」のように「不○なり」「無○なり」「非○なり」という場合は形容動詞であることが多い。それ以外に下記くらいのものは知っておいて損はないけど無理して暗記しなくてもいいかもしれません。 |
「 大切なり(たいせつなり) 」→『 重大である,さしせまっている 』 |
「 名誉なり(めいよなり) 」→『 優れている,評判だ,不思議だ,奇妙だ 』 |
「 勇猛なり(ゆみゃうなり) 」→『 強く勇ましい 』 |
「 真実なり(しんじちなり) 」→『 まともだ,真実だ 』 |
「 見事なり(みごとなり) 」→『 見事だ,立派だ 』 |
「 真実なり(しんじちなり) 」→『 本当だ,真実だ 』 |
「 神妙なり(しんべうなり) 」→『 絶妙だ,殊勝だ,穏やかだ 』 |
「 自然なり(しぜんなり) 」→『 本来の性質だ 』 |
「 至極なり(しごくなり) 」→『 この上ない,きわめてもっともだ 』 |
「 上手なり(じょうずなり) 」→『 物事に巧みだ 』 |
「 勇敢なり(ようかんなり) 」→『 勇気がある,粗暴だ 』 |
「 勝手なり(かってなり) 」→『 わがままだ,意のままだ 』 |
「 堅固なり(けんごなり) 」→『 意志が堅い,健康だ,丈夫だ 』 |
「 大切なり(たいせつなり) 」→『 重大だ,さしせまっている,大事だ 』 |
「 実用なり(じちようなり) 」→『 実直だ,まじめだ 』 |
「 小粒なり(こつぶなり) 」→『 粒が小さい,体や形がちいさい 』 |
「 微妙なり(みめうなり) 」→『 すばらしい 』 |
「 必定なり(ひつぢゃうなり) 」→『 確実だ,間違いない 』 |
「 息災なり(そくさいなり) 」→『 元気だ,健康だ,無事だ 』 |
「 愚痴なり(ぐちなり) 」→『 愚かで道理がわからない,愚かだ 』 |
「 親切なり(しんせつなり) 」→『 心がこもっている,思いやりが深い 』 |
「 異様なり(ことやうなり) 」→『 様子が普通とちがっている 』 |
「 迷惑なり(めいわくなり) 」→『 困惑している,不快に思っている 』 |
「 達者なり(たっしゃなり) 」→『 健康だ,丈夫だ 』 |
「 利口なり(りこうなり) 」→『 話し上手だ,こっけいだ,賢明だ 』 |
「 大事なり(だいじなり) 」→『 難儀だ,容易でない,大切だ 』 |
「 未練なり(みれんなり) 」→『 未熟だ,思い切りが悪い 』 |
「 結構なり(けっこうなり) 」→『 立派だ,丁重だ,温厚だ 』 |
「 素直なり(すなほなり) 」→『 ありのままだ,心がまっすぐだ,従順だ 』 |
「 綺麗なり(きれいなり) 」→『 美しく華やかだ,清らかだ,残りなく,潔い 』 |
そもそも「たり」ってあまりでてこないんですよね。入試にも一度として出たためしがないし助動詞で〔たり〕がでてきたら間違いなく〔断定〕ではないほうでOK・・・・と言い切っていいでしょう。
そこまで言うのならじゃあ「~たり」となる形容動詞をすべて(!)羅列しておきましょう。 |
「 漫漫たり(まんまんたり) 」→『 広々としている,果てしない 』 |
「 皎皎たり(かうかうたり) 」→『 白く美しい,白く光り輝いている 』 |
「 索索たり(さくさくたり) 」→『 音が寂しく響いている 』 |
「 颯颯たり(さつさつたり) 」→『 風がさわやかにふくようす 』 |
「 歴歴たり(れきれきたり) 」→『 はっきりしている,歴然としている 』 |
「 沈沈たり・深深たり 」→『 奥深く静かだ,身にしみる 』 |
「 清閑たり(せいかんたり) 」→『 清らかで静かだ 』 |
「 朧朧たり(ろうろうたり) 」→『 ぼうっとかすんでいる,薄明るい 』 |
「 清明たり(せいめいたり) 」→『 清らかで曇りがない 』 |
「 寂寞たり(じゃくまくたり) 」→『 もの寂しくひっそりとしている 』 |
「 尫弱たり(わうじゃくたり) 」→『 弱弱しい,財力も政治力もなく貧乏だ 』 |
「 朦朧(もうろうたり) 」→『 ぼうっと薄暗くかすんでいるようす 』 |
「 清明たり・清明なり 」→『 清らかで曇りがない 』 |
「 現前たり(げんぜんたり) 」→『 目の前にまざまざと見える 』 |
「 皓皓たり(かうかうたり) 」→『 白く美しい,白く光り輝いている 』 |
「 宵然たり(えうぜんたり) 」→『 奥深くて美しい 』 |
「 蕭条たり(せうでうたり) 」→『 ひっそりとしてもの寂しい 』 |
「 蹉跎なり(さだたり) 」→『 思うようにいかない,つまずく 』 |
「 尫弱たり(わうじゃくたり) 」→『 弱弱しい,貧乏だ 』 |
0 件のコメント:
コメントを投稿