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2013年6月25日火曜日

【201】助動詞①「き」「けり」

【201】助動詞①「き」「けり」
「き」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
しか 連用形 〔直接過去〕
「けり」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
けら けり ける けれ 連用形 〔伝聞過去〕 〔詠嘆〕
訳し方の基本:「き」→『~した』『~た』〔過去〕
訳し方の基本:「けり」→『~しただろう』『~ただろう』〔過去〕,『~たなあ』『~たことだ』〔詠嘆〕
「き」は自分が経験した過去,「けり」は他人が経験した過去→つまり伝聞
「けり」には〔過去〕以外に〔詠嘆〕の意味もあるので注意
〔断定〕の助動詞「なり」について「なりけり」ときた場合の「けり」→〔詠嘆〕と考えてよい
〔推量〕の助動詞「べし」について「べかりけり」ときた場合の「けり」→〔詠嘆〕と考えてよい
和歌の中で用いられる「けり」→〔詠嘆〕と考えてよい
会話文中の「けり」→〔詠嘆〕と考えてよい

【202】助動詞②「つ」「ぬ」

【202】助動詞②「つ」「ぬ」
「つ」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
つる つれ てよ 連用形 〔完了〕 〔強意〕
「ぬ」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
ぬる ぬれ ねよ 連用形 〔完了〕 〔強意〕
訳し方の基本:「つ」→『~した』『~してしまった』〔完了〕,『きっと~だろう』『必ず~だろう』〔強意〕
訳し方の基本:「ぬ」→『~した』『~してしまった』〔完了〕,『きっと~だろう』『必ず~だろう』〔強意〕
いずれも〔完了〕の意味として解釈するときは英語の現在完了形の完了用法と思ってよい
推量系の助動詞を下につけるときは〔強意〕と思ってよい
推量系の助動詞とは→「べし」「まし」「らし」「む」「むず」「らむ」「けむ」「めり」
実際に登場する形としては次の14種類を覚えておけばよい
てむ→「て」(「つ」の未然形)+「む」
なむ→「な」(「ぬ」の未然形)+「む」
てまし→「て」(「つ」の未然形)+「まし」
なまし→「な」(「ぬ」の未然形)+「まし」
てむず→「て」(「つ」の未然形)+「むず」
なむず→「な」(「ぬ」の未然形)+「むず」
てけむ→「て」(「つ」の連用形)+「けむ」
にけむ→「な」(「ぬ」の連用形)+「けむ」
つべし→「つ」(「つ」の終止形)+「べし」
ぬべし→「ぬ」(「ぬ」の終止形)+「べし」
つらし→「つ」(「つ」の終止形)+「らし」
ぬらし→「ぬ」(「ぬ」の終止形)+「らし」
つらむ→「つ」(「つ」の終止形)+「らむ」
ぬらむ→「ぬ」(「ぬ」の終止形)+「らむ」
つめり→「つ」(「つ」の終止形)+「めり」
ぬめり→「ぬ」(「ぬ」の終止形)+「めり」
※「む」「むず」「まし」は未然形接続,「けむ」は連用形接続,「べし」「らし」「らむ」「めり」は終止形接続

【203】助動詞③「たり」「り」

【203】助動詞③「たり」「り」
「たり」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
たら たり たり たる たれ たれ 連用形 〔存続〕 〔完了〕
「り」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
〔存続〕 〔完了〕
※サ変の未然形,四段の已然形に接続,それ以外には接続しない
訳し方の基本:「たり」→『~ている』『~てある』〔存続〕,『~した』〔完了〕
訳し方の基本:「り」→『~ている』『~てある』〔存続〕,『~した』〔完了〕
いずれも英語の現在完了形の継続用法くらいに思ってよい
まず〔存続〕として訳してみて意味がおかしければ〔完了〕と思えばよい
〔完了〕の意味にとるときは絶対に『~てしまった』と訳してはならない
※※「る」「れ」の識別
〔完了〕の助動詞「り」の連体形・已然形・命令形に「る」「れ」があり
〔受身〕〔可能〕〔自発〕〔尊敬〕の助動詞「る」の未然形・連用形・終止形に「れ」「る」がある
よって「る」「れ」がいずれなのか,はたまた別物かという識別が必要となる
「り」はサ変の未然形,四段の已然形に接続し,その他には接続しない→つまり直前にくる音がエ音(e)ということになる(なぜならサ変の未然形は「せ」,四段の已然形も語尾は「e」なのだから)→【結論】直前が「e」音である「る」「れ」ならば〔完了〕の助動詞「り」の「る」「れ」である
「る」は四段・ナ変・ラ変の未然形に接続し,その他には接続しない→つまり直前にくる音がア音(e)ということになる(なぜなら四段もナ変もラ変も未然形の語尾は「a」音なのだから)→【結論】直前が「a」音である「る」「れ」ならば〔受身〕〔可能〕〔自発〕〔尊敬〕の「る」の「る」「れ」である

【204】助動詞④「る」「らる」

【204】助動詞④「る」「らる」
「る」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
るる るれ れよ 〔受身〕 〔可能〕 〔自発〕 〔尊敬〕
※四段・ナ変・ラ変の未然形に接続,それ以外には接続しない→要するに語尾が「a」音の動詞の未然形接続
「らる」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
られ られ らる らるる らるれ られよ 〔受身〕 〔可能〕 〔自発〕 〔尊敬〕
※四段・ナ変・ラ変以外の未然形に接続,それ以外には接続しない→要するに語尾が「a」音でない動詞の未然形に接続
接続関係以外に「る」と「らる」で異なることはない。もっとはっきりいってしまえば「らる」の方は語尾が「a」音以外の動詞に「a」音(「ら」)を補って「らる」の形になっていると考えてもよい。現代において起きているいわゆる「ら」抜き言葉とは四段・ナ変・ラ変(→現代ではすべて五段)動詞以外の動詞の未然形に接続するとき補うべきこの「ら」音が抜けている現象をいう。このようにかんがえてみると意外とそれは助動詞「らる」の「る」への原点回帰といえるかもしれない(笑)。
訳し方の基本「る」「らる」:『~される』〔受身〕,『~できる』〔可能〕,『~なさる,お~になる』〔尊敬〕,『自然と~される,~せずにはいられない』〔自発〕
〔受身〕のときはまあ読めばわかる・・・であろう。口語とあまりかわらないから。
〔可能〕のときは下に〔打消〕の意味の助動詞が必ずくる(平安時代)。ただし鎌倉時代以降(というか「徒然草」であれば)そうでない場合もある。
〔尊敬〕のときは主語から判断するしかないが,「れ」+「給ふ」,「られ」+「給ふ」の「れ」「られ」は〔尊敬〕ではなく,この場合は〔受身〕か〔自発〕である。
〔自発〕のときは,直前に知覚動詞,心情動詞がくる・・・と思っていてさしつかえない。

【205】助動詞⑤「す」「さす」「しむ」

【205】助動詞⑤「す」「さす」「しむ」
「す」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
する すれ せよ 〔使役〕 〔尊敬〕
※四段・ナ変・ラ変の未然形に接続,それ以外には接続しない→要するに語尾が「a」音の動詞の未然形接続
「さす」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
させ させ さす さする さすれ させよ 〔使役〕 〔尊敬〕
※四段・ナ変・ラ変以外の未然形に接続,それ以外には接続しない→要するに語尾が「a」音でない動詞の未然形に接続
接続関係以外に「す」と「さす」で異なることはない。もっとはっきりいってしまえば「さす」の方は語尾が「a」音以外の動詞に「a」音(「さ」)を補って「さす」の形になっていると考えてもよい。現代においてラ抜現象と同じようにサ抜現象はまだ起きていない・・・・・。「食べさせる」を「食べせる」なんてことがもしかしたら今後流行るかもしれない(笑)。
「しむ」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
しめ しめ しむ しむる しむれ しめよ 未然形 〔使役〕 〔尊敬〕 〔受身〕
「しむ」は軍記物語(平家物語,平治物語など)にしか登場しない
「しむ」が軍記物語の合戦の場面(チャンチャンバラバラやる場面)に登場するときは〔受身〕の場合もある。これはたとえ自分が「ヤラレタ」ことでも相手に「ヤラサセタ」と表現する武者特有のプライド(というか負け惜しみ)があったからである。とはいえこの当時に実際チャンチャンバラバラやっていた武者たちのほとんどは文字すら読めなかったという話なので軍記物語の作者の負けた者に対するせめてもの情けということだろう。
訳し方の基本:「す」「さす」→『~させる』〔使役〕,『~なさる,お~になる』〔尊敬〕
訳し方の基本:「しむ」→『~させる』〔使役〕,『~なさる,お~になる』〔尊敬〕,『~される』〔受身〕
下に尊敬語(「給ふ」「おはします」「まします」「らる」)がないときは〔使役〕でよい。
下に尊敬語(「給ふ」「おはします」「まします」「らる」)があるときは〔使役〕か〔尊敬〕なので文脈判断する。

【206】助動詞⑥「む」「むず」

【206】助動詞⑥「む」「むず」
「む」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
未然形 〔推量〕 〔意志〕 〔勧誘〕 〔仮定〕 〔婉曲〕
「むず」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
むず むずる むずれ 未然形 〔推量〕 〔意志〕 〔勧誘〕 〔仮定〕 〔婉曲〕
「む」も「むず」も意味としてはほぼ同じ。ただし「む」は書き言葉,「むず」は話し言葉で用いる。
「むず」の連体形の「むずる」,已然形の「むずれ」は品詞分解するとき切りすぎないように注意。
訳し方の基本:「む」「むず」→『~だろう』〔推量〕,『~しよう』〔意志〕,『~がよい』〔勧誘〕,『もし~なら』〔仮定〕,『~ような』〔婉曲〕
文末の「む」「むず」→〔推量〕,〔意志〕,〔勧誘〕と思ってよい。
〔勧誘〕の「む」「むず」はある程度登場するときのパターンが決まっている。
係り結びの〔強意〕の「こそ」を使う→「こそ~め」→〔勧誘〕。
〔強意〕の助動詞「つ」が上につく→「て」+「む」→〔勧誘〕。(「て」は「つ」の未然形)
〔強意〕の助動詞「ぬ」が上につく→〔な〕+〔む〕→〔勧誘〕。(「な」は「ぬ」の未然形)
ためしに主語を「おまえは」としてみて意味が通れば〔勧誘〕→『おまえは~したほうがよい』(というか事実上の脅迫みたいな意味になるが)
文中の「む」「むず」→〔仮定〕,〔婉曲〕と思ってよい。
「む」「むず」の下が助詞ならば〔仮定〕
「む」「むず」の下が名詞(体言)ならば〔婉曲〕

【207】助動詞⑦「らむ」「けむ」

【207】助動詞⑦「らむ」「けむ」
「らむ」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
らむ らむ らめ 終止形 〔推量〕 〔原因推量〕 〔伝聞〕 〔婉曲〕
「けむ」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
けむ けむ けめ 連用形 〔推量〕 〔原因推量〕 〔伝聞〕 〔婉曲〕
「らむ」は現在の〔推量〕〔原因推量〕〔伝聞〕〔婉曲〕
「けむ」は過去の〔推量〕〔原因推量〕〔伝聞〕〔婉曲〕
訳し方の基本:「らむ」→『~いるだろう』〔推量〕,『どうして~なのだろう』〔原因推量〕,             『~いるとかいう』〔伝聞〕,『~いるような』〔婉曲〕
訳し方の基本:「けむ」→『~いただろう』〔推量〕,『どうして~いたのだろう』〔原因推量〕,           『~いたとかいう』〔伝聞〕,『~いたような』〔婉曲〕
文末の「らむ」「けむ」→〔推量〕,〔原因推量〕
文中の「らむ」「けむ」→〔伝聞〕,〔婉曲〕
※※「らむ」(「らん」)の識別
結論からいえば直前の用言の音で識別
「u」音+「らむ」→〔(現在)推量〕の「らむ」
「a」音+「らむ」→〔完了〕の「り」の未然形の「ら」+〔推量〕の「む」
「~ら」となる活用語(動詞など)の未然形+〔推量〕の「む」
以上3パターンのいずれかになる。

【208】助動詞⑧「らし」「めり」「なり」

【208】助動詞⑧「らし」「めり」「なり」
「らし」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
らし らし らし 〔推定〕
原則は終止形接続,ラ変型動詞・助動詞の連体形接続
ラ変型動詞・助動詞につくときは「る」が省略される場合もある(「ける」+「らし」→「けらし」,「なる」+「らし」→「ならし」,「ある」+「らし」→「あらし」など)
和歌にのみ使われる
訳し方の基本:(客観的事実から判断しての)『~だろう』〔推定〕,前後にその推定の根拠があるのが普通である
「めり」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
めり める めれ 〔推定〕
原則は終止形接続,ラ変型動詞・助動詞の連体形接続
ラ変型動詞・助動詞につくときは「る」が「ん」となったり,省略される場合もある(「ざる」+「めり」→「ざんめり」→「ざめり」,「なる」+「めり」→「なんめり」→「なめり」,「ある」+「めり」→「あんめり」→「あめり」など)
訳し方の基本:(目でみたことから判断しての)『(見たところ)~だろう』〔推定〕
「なり」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
なり なり なる なれ 〔伝聞〕 〔推定〕
原則は終止形接続,ラ変型動詞・助動詞の連体形接続
ラ変型動詞・助動詞につくときは「る」が「ん」となったり,省略される場合もある(「ざる」+「なり」→「ざんなり」→「ざなり」,「ある」+「なり」→「あんなり」→「あなり」など)
訳し方の基本:(耳で聞いたことから判断じての)『(聞いたところ)~だろう』〔推定〕,『~そうだ』〔伝聞〕
その文中に音の鳴りそうな言葉があれば〔推定〕,なければ〔伝聞〕と思ってよい。
※※「なり」の識別→後述

【209】助動詞⑨「べし」 「べらなり」

【209】助動詞⑨「べし」 「べらなり」
「べし」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
べく べく べし べき 〔推量〕〔意志〕〔可能〕〔当然〕〔命令〕〔適当〕
べから べかり べけれ
※原則は終止形接続,ラ変型動詞・助動詞の連体形接続
訳し方の基本:『~だろう』〔推量〕,『~しよう』〔意志〕,『~できる』〔可能〕,『~すべきだ,~はずだ』〔当然〕,『~せよ』〔命令〕,『~がよい,~が適当だ』〔適当〕
一言でいえば→「む」よりは(話者の主観からみた)当然性が強いのが「べし」と思えばよい。→つまり確信をもって〔推量〕すること→主観的にみれば〔当然〕ともいえる。
結局のところ文脈判断ということになるのだが・・・
まずは〔意志〕〔命令〕〔可能〕を考えてみよう
主語が一人称,主語を一人称(話者)にして話が通じるならば〔意志〕
主語が二人称,主語を二人称にして話が通じるならば〔命令〕
以上で意味が通じなければ「可能」を考えてみる
それでもし文意が通じなければ,〔推量〕〔当然〕〔適当〕と文脈判断してみる
まあ英語でいえば「shall」と「should」をあわせたような意味と思っていいだろう。もっとも英語の「shall」は〔話者の意志(未来)〕であり,それを弱めた(過去形にした)のが「should」だから『~すべきだ,~したほうがよい』という(強い強い)話者の主観的意志よりは少しひかえめなニュアンスになる。バカな教師は「must」=「should」などと教えるがこれは真っ赤なウソである。 「must」の原意は〔神の意志(→絶対性)〕 なので人間を含む万物の力を超越したものである。その証拠に「must」には弱めた形(過去形)がない。
「べらなり」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
べらにべらなりべらなるべらなれ〔推量〕
※原則は終止形接続,ラ変型動詞・助動詞の連体形接続
訳し方の基本:『~だろう』〔推量〕
「古今和歌集」の和歌によく登場する
「まじ」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
まじく まじく まじ まじき 〔打消推量〕〔打消意志〕 〔打消可能→不可能〕〔打消当然〕〔打消命令→禁止〕〔打消適当→不適当〕
まじから まじかり まじけれ
※原則は終止形接続,ラ変型動詞・助動詞の連体形接続
訳し方の基本:『~ないだろう』〔打消推量〕,『~ないつもりだ』〔打消意志〕,『~できない』〔不可能〕, 『~すべきでない,~しないはずだ』〔打消当然〕,『~してはいけない』〔禁止〕,『~てよいはずがない』〔不適当〕
要するに「べし」の打消と思っていればよい
「じ」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
未然形〔打消推量〕〔打消意志〕
訳し方の基本:『~ないだろう』〔打消推量〕,『~ないつもりだ』〔打消意志〕
主語が一人称ならば〔打消意志〕,そうでなければ〔打消推量〕と思ってよい

【210】助動詞⑩「まし」 「まほし」「たし」「ごとし」

【210】助動詞⑩「まし」 「まほし」「たし」「ごとし」
「まし」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
ましか まし まし ましか 未然形 〔反実仮想〕〔ためらいの意志〕〔推量〕
ませ
訳し方の基本:『(もし・・・だったらば)~だろう』〔反実仮想〕,『~しようかしら』〔ためらいの意志〕,『~だろう』〔推量〕
「A+ませ+ば+B+まし」,「A+ましか+ば+B+まし」,「A+せ+ば+B+まし」→『もしAだったらBだっただろうに』〔反実仮想〕
上記の場合の「ませ」「ましか」は「まし」の未然形,「せ」は〔過去〕の助動詞「き」の未然形である
「疑問語・・・・・・・・・・・・+まし」→『~しようかしら』〔ためらいの意志〕
それ以外は単純に〔推量〕でよい
この「まし」は英語でいえば「would」か「would like to」というところであろう。〔反実仮想〕というのは要するに仮定法過去のことだし,〔ひかえめの意志〕なんて「would」の2乗くらいそれこそ〔控えめな〕表現といえるだろう。 よって〔推量〕として訳すときであってもたとえば「べし」(=「shall,should」)などとは同じニュアンスではない。
「まほし」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
まほしくまほしまほしきまほしけれ未然形〔希望〕
まほしからまほしかりまほしかる
「たし」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
たくたしたきたけれ未然形〔希望〕
たからたかりたかる
訳し方の基本:「まほし」「たし」→『~たい,~してほしい』
「まほし」は平安時代,「たし」は鎌倉時代以降に使われる。
「ず」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
ずく未然形〔希望〕
ざらざりざるざれ
訳し方の基本:『~ない』〔打消〕
「ごとし」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
ごとくごとしごとき〔比況〕
※活用する単語の連体形と助詞「の」「が」に接続
訳し方の基本:『~のようだ』〔比況〕

2013年6月13日木曜日

【211】助動詞⑪(断定の)「なり」,(断定の)「たり」

【211】助動詞⑪(断定の)「なり」,(断定の)「たり」
「なり」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
なら なり なり なる なれ なれ 〔断定〕〔存在〕
※体言(名詞など),連体形,副詞,助詞に接続
訳し方の基本:『~である』〔断定〕,『~にある』〔存在〕
〔存在〕となるときは下記の形になる
「場所を表す語A」なる「名詞B」→『AにあるB,AにいるB』
「場所を表す語A」なりける「名詞B」→『AにあったB,AにいたB』
「たり」
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 接続 意味
たら たり たり たる たれ たれ 〔断定〕
※体言(名詞など),連体形,副詞,助詞に接続
訳し方の基本:『~である』〔断定〕
さて・・・・「なり」はここからが厄介でございまして・・・・
◎「なり」の識別
助動詞「なり」には〔断定・存在〕の「なり」と,〔伝聞・推定〕「なり」があり,この識別についてが厄介となります。実際のところ文脈判断する部分もあるのだけど,ここでは“これだけは絶対覚えよう”というのを示しておきます。
①「名詞」+「なり」→〔断定〕『~である』
②「連体形」+「なり」→〔断定〕『~である』
③「終止形」+「なり」→〔推定〕『~ようだ』
・・・・とここまではいいのだけど・・・・実は〔伝聞・推定〕の「なり」ってラ変動詞には「連体形」につくのですよね。・・・・ということで「ラ変動詞の連体形」+「なり」なんてでてきたら困ってしまう。じゃあ文脈判断するのかっていえば そもそも片方は〔断定〕で片方は〔推定〕なわけで,『ハッキリこうだ』というか『ドウヤラこうらしい』というかの違いだからどっちともとれることは多々あるわけです。そのくせ入試問題はイジワルなのでそういうところをついてくる。
でも・・・・ご安心を・・・・
④「あ(ん)なり」「か(ん)なり」「た(ん)なり」「な(ん)なり」「ざza(ん)なり」ときたときの「なり」は〔伝聞・推定〕で決まり!
これはどういうことかというと,例えばラ変動詞の「あり」の連体形の「ある」に「なり」をつけて「あるなり」が本来の言い方なのだけどこの「なり」が〔伝聞・推定〕だったときまず「あるなり」とはならず「あんなり」→「あなり」と変わってしまうことが多いということなんです。もちろんそうでない場合もあるのだけど,そんな微妙な場合を入試問題に出すわけがない。(というかいまだにナントカ物語のドコソコの「なり」は〔断定〕かや?〔推定〕かや?なんてヒマな議論している学者は多いわけでして)・・・・と信じましょう。信じるものは救われる!
さて・・・・〔断定(系)〕の「なり」と〔推定(系)〕の「なり」の区別は以上でとりあえずいいとして・・・・「なり」にはまだまだ厄介なものがあります。
「名詞」+「なり」の場合〔断定〕なのだけど・・・・日本語ってのは非常に摩訶不思議な言語で,「名詞」を加工して「形容動詞」ってやつをつくるんですよね。その加工のしかたがこれまた「名詞」+「なり」(あるいは「名詞」+「たり」)となるわけです。
つまり結論からいえば一見「名詞」+「なり」でも実はすべてまるごと「形容動詞」だったりするものもあるわけで・・・・
よく古典の授業で教師は“~ゲなり”“~カなり”ときたら「形容動詞」と教えていてあれはあれで間違いじゃないけど
それ以外にも英語でいう「抽象名詞」+「なり」となる場合でも「形容動詞」となる場合もあるのでご用心
こういう例は軽く100種くらいあるけど次のものは覚えておいていいかもしれません。(絶対必須というわけではないけど)
「不審なり」「不断なり」「無用なり」のように「不○なり」「無○なり」「非○なり」という場合は形容動詞であることが多い。それ以外に下記くらいのものは知っておいて損はないけど無理して暗記しなくてもいいかもしれません。
「 大切なり(たいせつなり) 」→『 重大である,さしせまっている 』
「 名誉なり(めいよなり) 」→『 優れている,評判だ,不思議だ,奇妙だ 』
「 勇猛なり(ゆみゃうなり) 」→『 強く勇ましい 』
「 真実なり(しんじちなり) 」→『 まともだ,真実だ 』
「 見事なり(みごとなり) 」→『 見事だ,立派だ 』
「 真実なり(しんじちなり) 」→『 本当だ,真実だ 』
「 神妙なり(しんべうなり) 」→『 絶妙だ,殊勝だ,穏やかだ 』
「 自然なり(しぜんなり) 」→『 本来の性質だ 』
「 至極なり(しごくなり) 」→『 この上ない,きわめてもっともだ 』
「 上手なり(じょうずなり) 」→『 物事に巧みだ 』
「 勇敢なり(ようかんなり) 」→『 勇気がある,粗暴だ 』
「 勝手なり(かってなり) 」→『 わがままだ,意のままだ 』
「 堅固なり(けんごなり) 」→『 意志が堅い,健康だ,丈夫だ 』
「 大切なり(たいせつなり) 」→『 重大だ,さしせまっている,大事だ 』
「 実用なり(じちようなり) 」→『 実直だ,まじめだ 』
「 小粒なり(こつぶなり) 」→『 粒が小さい,体や形がちいさい 』
「 微妙なり(みめうなり) 」→『 すばらしい 』
「 必定なり(ひつぢゃうなり) 」→『 確実だ,間違いない 』
「 息災なり(そくさいなり) 」→『 元気だ,健康だ,無事だ 』
「 愚痴なり(ぐちなり) 」→『 愚かで道理がわからない,愚かだ 』
「 親切なり(しんせつなり) 」→『 心がこもっている,思いやりが深い 』
「 異様なり(ことやうなり) 」→『 様子が普通とちがっている 』
「 迷惑なり(めいわくなり) 」→『 困惑している,不快に思っている 』
「 達者なり(たっしゃなり) 」→『 健康だ,丈夫だ 』
「 利口なり(りこうなり) 」→『 話し上手だ,こっけいだ,賢明だ 』
「 大事なり(だいじなり) 」→『 難儀だ,容易でない,大切だ 』
「 未練なり(みれんなり) 」→『 未熟だ,思い切りが悪い 』
「 結構なり(けっこうなり) 」→『 立派だ,丁重だ,温厚だ 』
「 素直なり(すなほなり) 」→『 ありのままだ,心がまっすぐだ,従順だ 』
「 綺麗なり(きれいなり) 」→『 美しく華やかだ,清らかだ,残りなく,潔い 』
えっ?
◎たりの識別
は無いのかって?
そもそも「たり」ってあまりでてこないんですよね。入試にも一度として出たためしがないし助動詞で〔たり〕がでてきたら間違いなく〔断定〕ではないほうでOK・・・・と言い切っていいでしょう。
え?それじゃ「たり」くんがかわいそうだって?
そこまで言うのならじゃあ「~たり」となる形容動詞をすべて(!)羅列しておきましょう。
「 漫漫たり(まんまんたり) 」→『 広々としている,果てしない 』
「 皎皎たり(かうかうたり) 」→『 白く美しい,白く光り輝いている 』
「 索索たり(さくさくたり) 」→『 音が寂しく響いている 』
「 颯颯たり(さつさつたり) 」→『 風がさわやかにふくようす 』
「 歴歴たり(れきれきたり) 」→『 はっきりしている,歴然としている 』
「 沈沈たり・深深たり 」→『 奥深く静かだ,身にしみる 』
「 清閑たり(せいかんたり) 」→『 清らかで静かだ 』
「 朧朧たり(ろうろうたり) 」→『 ぼうっとかすんでいる,薄明るい 』
「 清明たり(せいめいたり) 」→『 清らかで曇りがない 』
「 寂寞たり(じゃくまくたり) 」→『 もの寂しくひっそりとしている 』
「 尫弱たり(わうじゃくたり) 」→『 弱弱しい,財力も政治力もなく貧乏だ 』
「 朦朧(もうろうたり) 」→『 ぼうっと薄暗くかすんでいるようす 』
「 清明たり・清明なり 」→『 清らかで曇りがない 』
「 現前たり(げんぜんたり) 」→『 目の前にまざまざと見える 』
「 皓皓たり(かうかうたり) 」→『 白く美しい,白く光り輝いている 』
「 宵然たり(えうぜんたり) 」→『 奥深くて美しい 』
「 蕭条たり(せうでうたり) 」→『 ひっそりとしてもの寂しい 』
「 蹉跎なり(さだたり) 」→『 思うようにいかない,つまずく 』
「 尫弱たり(わうじゃくたり) 」→『 弱弱しい,貧乏だ 』
これで全部です。